他愛のない話
私には一生見ないと決めている映画がある。これを人はトラウマと呼ぶのかもしれないが、とにかくこれだけは見ないと決めている。
ざっくりしたあらすじくらいしか知らないのだけれど、シングルマザーに振り回される子供が出てくる映画だ。兄弟の仲には置き去りにされて死んでしまう子供もいるらしい。
この監督は数年前に福山雅治が主演の「そして父になる」を撮っている。
おそらくこれも見ないと思う。この是枝監督は、自分の中に家族というテーマを持っている人なんだろうと思われる。
ところで「誰も知らない」を何故一生見ないと決めているのかというと、母親役のYOUが怖いからというしょうもない理由からだ。正確に書くなら予告で見たYOUの演じる母親の声とか動いているところを見たら、ゾワっとした。子供のように無邪気で可愛らしい、年よりもずいぶん若く見える女性が私はものすごく苦手なのだ。なんでドキュメンタリータッチでフィクションなんか撮るんだろうね。
あの可愛らしいしゃべり方を聞くと、全く似ていないのに自分の母親を連想させられる。似ていないんだけれど、何か神経に障る部分がある。あの映画は私にとって、もしかしたらあり得たかもしれない自分に思えて仕方がない。(実話を元にしているそうだ)
勿論両親は離婚してはいないし、あの映画との共通点も多くないはずだ。なのにパッケージの少年の色々なことをあきらめたような表情を見ると、(演出だと分かっていても)地面に釘かなんかと一緒に打ち付けられたみたいに、そこからどうしても前に進めなくなる気持ちにさせられる。
あのころより遠い遠いところへ逃げてきた。でもあの男の子の伏せた目線は私を無力だった子供時代 に引き戻す。
トラウマって頑張って克服しなくてもいいと思う。人は自分以外の人間には決してなれないからだ。なれないまま、ズルズルと死ぬまで生き続けるんじゃないかな。
あのころは明日って本当に来るのかな?って思っていた。私は同じ時間の中をぐるぐる回っているだけな気がしていた。もしかしたら私は、誰かの夢の中にしか存在していなくて、その誰かが朝になって目が覚めたなら、私は消えてしまうんじゃないのかな?と結構本気で考えていた。でもそれならそれで仕方がないだろうと諦めてもいた。
夜と朝のつなぎ目はどこにあるんだろう。