ところでロマンチックを知らせる回覧板は、いつごろ回って来るのか

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月の裏側は見えないという話ー『ど根性ガエルの娘』の感想その2

 

月の裏側は見えないという話ー『ど根性ガエルの娘』の感想 - ところでロマンチックを知らせる回覧板は、いつごろ回って来るのか

私にしては多くの方々に読んでもらったので満足していたのですが、テーマというかマンガの持っている破壊力が凄まじかったせいなのか書き足りない!と感じる部分があり、その2を書きたくなりました。

 

この『ど根性ガエルの娘』というマンガを家族の再生の話だと捉えただとか捉えなかったとかでブックマークが盛り上がっているのを読みながら、私自身の感想があまりに違うことが軽くショックだったのです。

 

 

もはや映画の羅生門。誰が真実を語っているのか、誰も真実を語っていないのか、そもそも真実はあるのか。

 私の感覚としてはこのid:rjjさんの感想がかなりしっくりくるような気がしましたね。つまり真実なんてものはそもそもないんですよ。もしくは登場人物のそれぞれがそれぞれの自分だけの真実を心に持っている。

 

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これは全くの私の勝手な想像でしかないのだけれど、作者というか彼女は、描かないと死ぬくらいまで追い詰められていたんじゃないかと思う。何を描こうとか結末をどうしようとかではなく、彼女にとっての「お父さんと私の話」をおそらく描かないとおかしくなっちゃうから描いたんだと思う。だからこの超個人的な話を筋道たててきちんと捉えようとすれば捉えようとするほど、理解すれば理解しようとすればするほど他人にはめちゃくちゃに思えてしまうだろうし、人によっては騙されたような気すらしてしまうかもしれない。

大体描かれていることが全部本当かどうかなんて確かめようもないし、確かめても仕方ないんだよね。

 

それから毒親という表現が出てきますが、それよりも私には彼女が父の娘*1であるという側面を強く持っているのではないか?と思いました。彼女の母親に対するこだわりは、父親ほどではないことからの推測です。

父親ああいう非常に困った人物だったことで、大小のさまざまなもめごとが家族の中で起きたのだけれど、それとは別に彼女は父親との関係にこだわり続けている人(現在形で)なんじゃなかなーと。弟さんは父親に対してそこまでの精神的なこだわりがなかったから、父親とそれなりの関係を築けたのかもしれないなーなんて勝手に考えてみました。

 

でも全ては私の勝手な推測でしかないので、結論はあってないようなものですが、もしかしたらあれは彼女がお父さんへ向けて描いた愛憎の入り混じったラブレターみたいなものかもしれないな、なんて思ったりもします。(さすがに強引か?)

 

 

結局他人の月の裏側は見えないし、わざわざ見る必要もないんじゃないかと思うんですが。

*1:平たく言ってしまえばファザコン。父と精神的に密着する娘のこと。ユング派の女性分析家によって1980 年代に生み出された概念。「父なるもの」の強い影響下にある女性といった意味をもっている。フロイトはこれを男児とは異なる女児エディプス・コンプレックスであるとした。