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ところでロマンチックを知らせる回覧板は、いつごろ回って来るのか

放送大学に関すること、及び読書その他についてをゆるゆると語る

黒い迷宮ー異邦人から見たトウキョウ

読書

彼女はアリスじゃなくてルーシ

ノンフィクションでイギリスのタイムズ紙の記者が書いた本。もう15年もたっていたのかと。

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

 

 イギリス人のルーシー・ブラックマンという女性が日本で行方不明となり、結局死体で見つかったという事件があった。犯人は織原城二という男で、驚くべきことに彼はルーシーさんの事件に関しては証拠不十分のため無罪という判決を受けている。なぜそうなってしまったのか。そもそもルーシー・ブラックマンという人はどういう女性だったのか。なんのために日本にやって来たのか。著者は調べうる限りのことを全て調べて書いています。

不思議の国のアリス」を生み出した国から来た21歳の背の高いブロンドの女性が、アリスが迷い込んだ不思議の国よりももっと見通しのきかない、著者が「黒い迷宮」と名前をつけたトウキョウに吸い込まれるように消えてしまった現実に起こった事件。

ルーシーを探すためにトウキョウにやって来た家族たちは、不思議の国トウキョウで何もできない失意を抱えてイギリスに戻って行き、そのことが原因で人生が大きく変わってしまいました。日本人の記者なら書くことをためらってしまうようなことも綿密に書いています。

父親が娘を探してやるというサギ男にだまされたこと。織原から「お悔やみ金」という名目で1億円もらったこと。母親が娘の死を受け容れられずにスピリチュアルな世界にのめりこんでしまったこと。妹が事件のショックで心を病んでしまったことルーシーと一緒に日本へやって来て、一人で帰った親友のその後。

犯人の織原という男の生い立ちも書かれています。彼が在日韓国人であったということ。友達と呼べる人物が、一人もいなかったということ。彼の犯した他の犯罪のこと。そしてその被害者と家族のこと。

実は事件の当事者の中には、誰一人日本人がいないのです。そしてこの本ですら日本人が書いた本ではない。まるで裏「不思議の国のアリス」です。(でもルーシーは真っ黒な迷宮で迷ったまま、とうとう家には戻れませんでした。お悔やみを申し上げます)

 

けっこうな厚みのある本ですが、(500ページ以上!)一度読み出すと止まらない魅力がありました。日本人では決して見られない異邦人の見たトウキョウの姿は、非常に奇妙な街なのでしょうね。