ところでロマンチックを知らせる回覧板は、いつごろ回って来るのか

現実主義な私が日々心に浮かぶことを、ゆるゆると書いていく

寂しい王様についての話ーヘンリー・ダーガーの望んだかなわなかった夢

もう一人の男の話

前回の記事で、京都の孤独な男の人について書いた。

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 そして王国を創り上げたと言えばこの人もそうだった。

“ アウトサイダーアートの中でも異彩を放つ”など今なお一定のファンの心をつかんでいるヘンリー・ダーガー*1であるが、私がこのDVDの中のエピソードで忘れられなかったのが、ヘンリーは養子を欲しがっていたがついにかなわなかった、ということである。

そのことは申し訳程度にしか語られていなかったのでそれ以上分からないのだが、何度も養子希望の申請を出していたとのことだ。あくまで私の勝手な想像なのだが、ひっそりと社会の片隅で生きる彼の生み出した芸術の王国は、ヘンリー・ダーカーの熱心なファンには非常に失礼な見解かもしれないけれど、養子を貰って一人ぼっちではなく家族と生きるという望みの代わりのような気がする。

ヘンリーは自分の死後、自分の書いた膨大な話や絵に対してはどうして欲しいという希望は特になかったらしい。他人から見たら羨ましいとされる彼の芸術の王国は、彼とってはそこまでの価値がなかったのかもしれない。

才能は全てを覆いつくすのか?

ヘンリーはたまたま特別な才能を持っていたけれど、自分の周りを覆い尽くしたという意味では京都の男性と通じるような気がした。彼の才能は勿論素晴らしいし惹きつけられるのだが、生涯の多くを一人きりで終えた彼の望みが本当はなんだったのかは、もう誰にも知ることはできない。

*1:誰に見せることもなく半世紀以上もの間、たった一人で作品を書き続けたが、死の直前にそれが「発見」され、アウトサイダー・アートの代表的な作家として評価されるようになった